紛争解決の手順・手続
第1 先ず法律相談
法律相談によって、「あなたはどうすべきか。」が分かり、弁護士に依頼しなくても、解決することもあります。
弁護士に依頼する紛争については、どのような手続をし、幾ら位の費用が掛かるかを、説明します。
第2 民事事件
1.交渉
事案の内容によって、交渉から始めることがあります。
交渉は、受任通知を送付して始めます。受任通知は、内容証明郵便ですることが多いのですが、普通郵便で送付することもあります。
その後、書面で主張したり、証拠を示したり、電話したり、面談したりして、話合い、話合いがまとまると、和解契約書を作成します。そして、双方が和解契約を守れば、紛争解決です。
話合いがまとまらない場合や、和解契約が守られないときは、民事調停を申立てたり、裁判を起こしたりします。
交渉の場合、一般に、早期に解決し、費用が安く済みます。
2.民事調停
裁判所における話合いによる解決が相当と思われる事案は、民事調停を申立てます。
民事調停は、簡易裁判所で、調停委員を仲裁役にして話合う紛争解決制度です。
話合いが成立した場合、裁判所は、調停調書を作成します。調停調書に記載してある約束事に従わないときは、他方は、裁判所に強制執行を申立てることができます。
この点において、調停調書は、判決書と同じ効力を有します。
弁護士が裁判所に出頭しますが、ご本人にも同行して頂くことが多い手続です。基本的に、対立する当事者が同席して話合うことはありません。
3.民事訴訟
不動産取引、境界、貸金、交通事故、建築、医療等の民事の紛争についての裁判を言います。
民事事件において、話合いで解決することが困難な紛争で、証拠があり、勝訴の見通しが高いときは、民事訴訟を提起します。民事訴訟は、手続がある程度進むと、双方の主張と証拠が整理され、いずれの言い分が勝訴する可能性が高いかの見通しが着きます。その段階で、裁判所で話合いをし、双方が譲り合って、和解をすることがあります。
これが、裁判上の和解です。
和解が成立すると、裁判所は、和解調書を作成しますが、和解調書は、判決書と同じ効力を有します。和解が成立しないときは、証拠調べをした上で、裁判所が判決をします。
それ故、民事訴訟は、どちらの言い分が正しいか、必ず決着する手続です。
判決に不満があるときは、控訴して争うことができます。
これが、第二審手続です。控訴して、控訴審で和解が成立して解決することもあります。
控訴審で和解が成立しないときは、控訴審が判決します。
その控訴審の判決に不満があるときは、上告審に裁判を求めることもできますが、上告審は、限られた場合にしか、裁判をしないことになっています。
4.その他
交通事故を対象とする弁護士会の示談あっせん等、裁判所以外の紛争解決制度(ADR)を利用することもあります。
第3 家事事件
1.離婚
(1)家事調停
協議離婚が成立しないときや当事者で協議することが相当でないときは、家庭裁判所に対し、夫婦関係調整の調停を申立てます。調停を経ずに、いきなり離婚裁判を提起することはできません。
家事調停の基本的な仕組みは、民事調停と同じです。調停委員を仲裁役として、離婚するか否か、離婚する場合の条件を話合い、離婚とその条件について、当事者間で合意が成立すれば、調停調書が作成され、離婚が成立します。
ただし、戸籍に離婚したことを記載して貰うために、調停で離婚が成立した旨を役所に届け出ることが必要です。
基本的に、夫婦が同席して話合うことはありません。
(2)離婚訴訟
相手方が離婚を拒否しているため、或いは、相手方が出頭しないために、調停が成立しないときに、離婚したいときは、家庭裁判所に対し、離婚訴訟を提起することになります。
離婚訴訟の手続は、基本的に、一般民事訴訟と同じです。
離婚訴訟で和解が成立したとき、或いは、判決で離婚請求が認容されたときに、離婚が成立します。
(3)不貞相手への慰謝料請求訴訟
不貞相手に対する慰謝料請求訴訟は、地方裁判所に提起しますが、家庭裁判所に移送され、離婚訴訟と併合されることもあります。
2.遺産分割
遺産分割で当事者同士での協議が成立しないときは、家庭裁判所に対し、遺産分割を求める調停を申立てます。
調停の基本的仕組みは、民事調停や家事調停と同じです。
調停が成立しない場合、家庭裁判所が、審判をします。
遺産分割の審判は、審判がなされるまでに長期間を要することがあります。
遺産分割の審判に不満があるときは、高等裁判所に、抗告を申立てることができます。
3.遺留分
遺言で遺産が貰えないことになった場合、1年内であれば、遺留分減殺請求ができます。
遺留分減殺請求をした後、交渉で解決しない場合、或いは、調停を申立てたものの、調停が成立しないときは、地方裁判所に対し、遺留分減殺請求訴訟を提起することができます。
遺言が有効か無効かを争う場合や、特定の財産が遺産であるかどうかについて争う場合も、地方裁判所で裁判をすることになります。
4.生活費・親子関係
生活費が貰えないときや、養育費や親子の面会について争いがあるときは、家庭裁判所に対し、調停を申立てます。
調停が成立しないときは、家庭裁判所が審判をします。
第4 債務整理
1.債権調査
サラ金や信販会社など、利息制限法の適用が問題となる借入については、債権者から取引明細を取寄せ、利息制限法を適用して計算し、過払いであるか、残債があるかを調査します。
2.過払金返還請求
この段階で、過払いがあれば、過払金の返還を請求します。
過払金の返還請求は、交渉で行いますが、交渉が成立しないときは、訴訟を提起します。
3.自己破産の申立
債務が、資産・収入を上回り、支払不能と思われるときは、債務者が破産を申立てることによって解決する方法があります。債務者自身が申立てる破産手続であるため、自己破産と言います。
資産がほとんどない場合は、破産決定と同時に破産手続の終了が宣言されることがあります。
破産決定と同時に破産手続が廃止されるため、同時廃止と言います。
資産が一定以上あるときは、破産管財人が選任され、破産管財人が、債務と資産を調査し、資産は換価して、破産債権者に配当します。配当するだけの資産が無いときは、破産手続が廃止されます。
これを、異時廃止といいます。
会社経営者が自己破産申立てをするときは、会社も同時に自己破産申立てをする必要があります。
会社破産を申立てるときは、混乱が生じないよう十分な準備と対策が必要です。
4.免責手続
破産手続に引続き、破産債権の返済義務を免ずる免責手続がなされます。
財産を隠したとき、不当に財産を減少させたとき、浪費や賭博が原因で借金をしたときなどは、免責されません。
また、免責されても、租税、悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権、悪意又は重過失で人を死傷させたことに基づく損害賠償請求権、婚姻費用や養育費などは、免責から除外されます。
5.小規模個人再生の申立
免責が認められないような事情があるとき、住宅ローンを支払っている住宅を確保したいときは、個人再生の申立をします。
個人再生は、住宅ローンなどの債務以外の債務(基準債権)が5000万円以下である場合に申立ることができます。
そして、基準債権が3000万円を超え5000万円のときはその10%を、基準債権が3000万円以下のときはその20%(上限は300万円)又は100万円のいずれか多い額、基準債権が100万円以下のときはその額を、原則として3年以内に分割で支払うことによって、残債が免除されます。
第5 刑事事件
1.示談
被害者が存在する犯罪の場合、被害者と示談すれば、刑事処分が軽くなります。
特に、起訴されるまでの被疑者段階では、示談することによって、釈放されたり、起訴を免れることがあります。
起訴後も、示談することによって、実刑を免れたり、刑期が短くなったりします。
2.被疑者弁護
逮捕され、勾留を経て、起訴されるまでの弁護です。取調べ乃至供述調書についての被疑者への助言、警察による違法・不当な取調べの有無につき、庇護慰謝からの聴取と警察に対する抗議、勾留請求されたときの裁判所との交渉、裁判所の勾留決定に対する準抗告の申立て、裁判所の勾留延長決定に対する準抗告の申立て、接見禁止に対する一部解除の申立て、刑事処分についての検察官との交渉などの弁護活動を行います。前述の示談も重要な弁護活動です。
3.被告人弁護
起訴後判決言渡しまでの弁護です。起訴されたときは、先ず保釈請求をし、公判前整理手続においては、証明予定事実に対する求釈明の申立て、類型証拠開示請求、検察官請求証拠に対する意見、予定主張、弁護側請求証拠の開示などの手続をし、裁判員裁判においては、裁判員等選任手続における不選任の請求、公判開始後は、冒頭陳述、証人や被告人の尋問、最終弁論をします。